NOVEL 1

【案外甘え上手なあの子 /浮日】
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「なぁ、浮竹」

「なんだい?冬獅郎」

今日非番だという日番谷が十三番隊の雨乾堂を訪れてすでに二刻ほどが経過した頃だった。
その日体調が良かった浮竹は起き上がって本を読んでおり、日番谷は自分自身の左腕を枕にして庭に面するように横になっていた。
日番谷の顔は浮竹からは見えず、特に変化のない景色を眺めているのか、それとも目を閉じているのかも分からなかったが、声を掛けられたことでどうやら寝てはいなかったらしいと知る。

「ちょっと聞きてぇんだけどさ」
「ん?」

軽い気持ちで先を促す。
別段いつもと何も変わらない状況だった。


「浮竹、お前今つき合ってる女とかいるか?」

だが聞かれたのはいつもだったら口の端にも上らなさそうな話題だった。
浮竹は内心ドキリとする。
それと同時に一体どうしたのかと怪訝に思いながらも素直に答える。

「……そういう女性はいないが?」
「じゃあ好きな女とか」
「いないよ。………なんだい、急に」

いよいよおかしく思い、困ったように緩く眉を寄せた。
日番谷の質問の意図が全く分からなかったからだ。

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