1/2ページ目 オレは疲れていた。 周囲にはどう見えていたのかは知らない。気取られるつもりもなかった。 だがオレは確かに、疲れていた。 多くを臨まれることにも、理解されず孤独であることにも。 虚しさを覚えていたといってもいいかもしれない。 恐ろしいことに己の力は底が見えず、他人のする努力の何万分の一かで多くを得、壁に突き当たっても己が望み、努力すれば容易く超えることができた。 他人が聞けば誰もが羨むかもかもしれないが、流魂街で生れ落ちてからずっとその連続である自分には酷く憂鬱だった。 力を得ても、自分の欲しいものは手に入らないのだから。 例えば他愛もない、成績の良し悪しを語らう友人とのやり取り。 仕事に失敗して同僚や気のいい先輩に愚痴を零す日常。 疲れて立てなくなったときに、隣りで支えてくれる心許せる誰か。 気付けば最年少で護廷十三隊の隊長に上り詰めたオレは、すでに生身ではなく『十番隊隊長・日番谷冬獅郎』という偶像化された存在になっていた。 それはこれから先もずっと変わらないのだろう。 己の年齢を鑑みればそれは気の遠くなるほどの長さだ。 ――――オレは孤独だった。 「僕についておいで」 そんなオレに藍染は囁いた。 「君が望むものなら何でもあげるよ。世界が欲しいなら、それもあげよう。僕の目的の後は君の好きすればいい」 裏切りを唆す、甘言。 だが全てを与えるというその代償は。 「日番谷君はただ隣にいるだけでいい。君は僕に相応しいのだから」 冷酷で無慈悲な男の、きっとそれは愚かで滑稽なプロポーズの言葉だった。 オレの類まれなる霊力でもなく、ただ自分の存在だけを望む言葉にらしくなく心が震えた。 それでも。 たとえ藍染が神になろうとも、自分の望みを叶えられないことも分かりきっていた。 オレの望みは―――――平凡。 普通に生まれ、普通に死ぬこと。 だが死神となった今、それを叶える術はない。 いや、違う。 この男なら容易く叶えてくれるかもしれない。 例えば―――――。 藍染の誘いに、オレは答えた。 「世界なんか要らねぇ。もしお前がホントにオレの望みを叶えてくれるというなら――――――」 オレは願った。 「虫ケラのように殺してくれ」 死に方はともかく、死自体は誰にでも平等だろうから。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
w友達に教えるw [編集] 無料ホームページ作成は@peps! |