NOVEL 1

【The cage of arms /藍日】
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再会は驚くほどあっさりと叶った。
敵として、護廷の隊長としてあったときは遠く、難攻不落のように思えた虚夜宮も、ただの個人として乗り込んでみれば、こちらの気が抜けるほど簡単に城の主に目通りできた。
「どういう気持ちの変化か知れないが、嬉しいよ。日番谷君」
そういって玉座の主は破顔する。
それが本心からか作ったものなのか、この距離では分からないなと客観的に思ったとき、その男―――藍染が立ち上がった。
「こんなところで邂逅を祝うのも無粋だね。ついて来なさい」
ここまで来て否やはない。
言われるまま、藍染に続くように日番谷は広間を後にした。



日番谷が己の気持ちに気がついたのは、実はつい最近のことだった。
かつて男の裏切りを知らないときは尊敬と憧憬の対象であったが、その慎ましやかだった気持ちは裏切りによって憎悪と嫌悪に塗り替えられた。
以前は優しく、大切にされていた分だけ憎しみは募った。
かならずこの手で殺してやろうと誓い、日番谷は生まれて初めて具体的な目的のために鍛錬した。
しかし―――――。

何故そこまで憎いのか。
その理由に気がついたとき、全てが粉々に砕け散るほどの衝撃を受けた。
自分は己を裏切った男を、同僚としてではなく、好いていたのだ。
――――忘れることも諦めることも出来ないくらいに。
しかしその感情が恋慕だと認めるには日番谷は幼すぎ、そしてその気持ちを斬り捨てる術も知らず―――。


市丸が現れ日番谷に囁いたのは、そんなときだった。

『あのオッサン、ずぅっと待っとるんよ。君が来てくれるのを』

それは懊悩を見透かし唆すように、心の弱く柔らかい部分を突くように、耳に沁み込んだ。

『君は若くてよう分からんやろうけど、ええ歳なると体裁気にして素直になれへんのや。諦められん癖に、なぁ?』

謀を至上の楽しみにしているような市丸の言葉を信じることが、どれだけ愚かか分からない日番谷ではない。
けれど。

ただ知りたかった。
藍染の、――――己が初めて慕った男の真意を。

たとえ策に嵌められ愚かと笑われるとしても、それならそれで気が晴れるだろう。
己を貶めた報いに精々足掻いて戦力を削いでやるつもりだった。
今更、死を恐れはしない。
元より藍染を己が手で殺す為に鍛錬を重ねていたのだ。



そんな決意を反芻しながら、前を歩く男の背中を見上げる。
着ている服のラインのせいか、死覇装に白い羽織のときと比べて一回りスッキリして見えた。

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