NOVEL 1

【ロマンチックニヒリスト /市日】
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本人は気付いていたのだろうか?

今更それを知る術はないけれど。







あの男が自分に投影するのは夢や願望。
それは綺麗なものばかり。
自分が失ってしまったもの。
―――いや、欲しかったものなのかもしれない。


世界を裏切ることなどできるのに。

それほど此処に自分を縛り付けるものは希薄だ。
もし、あの男が。
己を愛した、あの男が望むなら、共に歩んでも良かったのだ。
この世界の綻びも醜悪さも知っていたから。


だがそうしなかったのは。


あの男が望まなかったからだ。
自分は裏切らないだろう、という彼の予想、――――いや、理想の元に。
連れて行けば自分が穢れるとでも思ったのだろうか。
恋も愛も軽んじる言葉を吐きながら、理解し得ないからこそ理想化して自分に押し付けるような男だった。

――――永遠の愛を誓うような愚かな男だった。

信じてもいないくせに、信じたがっていたロマンチスト。

自分とは間逆だ。
自分は完全なリアリストだ。恋も愛も、そのときが真実なら構わなかった。

「夢見すぎなんだよ、あいつは」
苦笑が漏れる。
自分は清廉潔白でもなんでもない。
しかしあの男の夢を壊してしまうのも忍びない。
――――今、こうなってしまった現実では。

きっとお前は、まだオレのことを愛しているんだろう?
オレは哂う。

だから。


「……せめてあいつの理想通りでいてやるよ」

あいつがなりたくてなれなかった自分。
理想の恋人、そして。


愛する者の手に掛かる、そんな永遠の一瞬を望むなら。


「叶えてやる」


お前に与えてやれる、それが自分の愛の形。









―――――本当は。

           ただ、一言。




一緒に行こうと 言ってくれれば良かったのに。


END
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