NOVEL 1

【Canta per me /市日】
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尸魂界に空座町を転移して始まった決戦。
市丸ギンは街の残骸の中を身体を引き摺るようにして歩いていた。
当初は1対1の様相を呈していた戦いだったが、すぐに脱落者や思わぬ乱入者により戦局が拡大・分散してしまった。
その中で自分も数名と戦い、割り当てられた己の役目をそこそこにこなせたと市丸は勝手に判断していた。
特別どう行動しろと命じられたわけではないが、まぁこんなものだろう。

周りを伺えば、あちこちで行われていた霊圧のぶつかり合いも今は一段落しており、遠くで一つ、大きな霊圧の衝突を感じる他は何も感じられなくなっていた。
つまりは市丸の思うとおり、最終的な決着を残し、粗方は片がついたのだろう。
破面たちの気配も、敵である死神の隊長格の霊圧も感じられない。
現状、自分も、残っている霊力は微々たるものだ。
どれだけの者が今、生き残っているのか。

――――まぁそんなん、どうでもええけどね。

含みも何もなく、そう思う。
自分自身、特別生き残りたいと思っているわけでもない。
遠くで感じる霊圧―――藍染の元へ向かっているわけでもなく、差し当たっての目的地も持たずに、ただ惰性で歩みを進めているにすぎない。
ところどころ赤く染まった身体は重く、ひどく億劫に感じたが、生きて、動けるうちは、人はそうやって足掻くものなのだろうか。

まるで人事のように考えながらしばらくそうして歩いてゆくと、崩れた建物の柱にもたれる様にして、誰かがしゃがみ込んでいるのが見えた。

「…………」

死覇装にボロボロの隊長羽織。
それが元同僚であり、現在の市丸の敵のひとり――――十番隊隊長の日番谷だとすぐに知れた。
誘われるようにふらふらと歩み寄る。
遠目にも小さなその身体は、近寄ってみてもまだ小さかった。


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