NOVEL 1

【氷と水鏡・虚 〜1〜 /藍日】
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それは奇異な光景だった。

諸悪の根源ともいえる敵の本拠地・虚圏にある虚夜宮の本営に一人、黒の死覇装を纏った死神が佇んでいる。
玉座に座る男の前に立つその死神の少年――――というより幼い子供の外見だったが―――――を取り囲むように白い死覇装の破面達が窺っていた。

「来てくれると思っていたよ、日番谷君」

「………お前の思惑通りだよ」

少年は感慨もなく応える。

「雛森君は、はやり僕なしでは無理だったかい?」

玉座の男は口元に笑みを浮かべながら、だが少しも面白くなさそうに言う。

彼が裏切った少女は心が壊れたまま、もう幼馴染の少年を必要としなかった。
かつて大切で唯一と思えた太陽が、実は何より重い足枷と同義だと気付いたとき、少年の剛い心は凍えてしまった。
その斬魂刀の性そのままに。
小さな胸に見えない大きな虚無の穴が開く。
そうして彼女という足枷が外れれば、彼の心は酷く軽く世界に無関心だった。

滅んでもいいと思えるくらいには。

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