NOVEL 1

【氷と水鏡・虚 〜2〜 /藍日+市丸】
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市丸ギンが白い死覇装を纏った小さな後ろ姿を見掛けたのは、最後に黒い死覇装で藍染に抱えられて出て行くのを見てから、ちょうど丸1日くらい――――といっても虚圏には太陽もないので感覚的なものだったが―――――、経った頃だった。
かつて数体の破面を倒し藍染にも特別敬意を払う様子のない元十番隊隊長は、虚圏におけるその身の危うさに全く頓着していないようだ。
最も下手な破面が絡んだところで文字通り冷たくあしらって終わりだろうが。

「なんや、歩き回れるくらい元気なん?」

小さな白い後ろ姿に気まぐれに声を掛ける。
多分機嫌は良くないだろうが、今も昔も彼の気分に配慮したことはない。
市丸は、生真面目なこの子供をからかうのが昔から面白くて仕方なかった。

「てっきり藍染はんに、そりゃもうしつこく苛められとる思うたのに」

応えはない。
色事に興味もなく、むしろ軽薄な言い回しの嫌いな少年は、市丸の言葉を完全に無視した。
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