NOVEL 1

【予め失われた恋人 /藍日】
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朝から寒い日だった。
隊舎を繋ぐ渡り廊下は屋根こそついているが実質外を歩いているのと変わらず、板張りの回廊からは草履越しにも凍える冷気が伝わってくる。
斬魄刀の性質もあって寒さには強い日番谷だったが、特別寒いのが好きというわけでもないので足早に十番隊舎へと歩いていると、ふと視界の端にに白いものが掠めた。

それを追うように視線を外に向ければ、空からちらちらと粉雪が舞い始めたようだった。
その雪とともにもう一つ白い塊を見つけて、足を止める。

いつも寄っている眉間の皺をさらに寄せてその白い塊を見やった。

「………藍染?なにやってんだ……」

渡り廊下から臨む中庭に、五の文字を染め抜いた白い羽織が見えた。
霊圧を消しているようだが、別に姿を隠しているわけでもなく、ぼんやりとこちらに背を向けて空を眺めている。
大の大人がただ突っ立っている姿は少し間抜けだ。
大抵いつも藍染の側にいる雛森も姿が見えない。

日番谷は渡り廊下から外れ、藍染の元に歩み寄った。

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