NOVEL 1

【慈悲の椅子 /藍日】
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大きな音を立てて巨大な氷が砕け散る。
キラキラと降り注ぐそれらの破片を眺めながら藍染は微笑みを浮かべて言った。

「……ああ。やっぱり子供の身体は薄いね。うっかり両断するところだった」

物騒な内容と裏腹に、崩折れた少年の胸の半ばまで達した傷は、辛うじて致命傷を避けていた。
その腕前に市丸は多少の畏怖とともに心底感心する。

「彼の斬魄刀は便利だね。…ホラ、主の出血を止めようともう傷の表面が凍っているよ」

興味深げにいう表情は楽しそうでもあった。

「いいんですの?僕はてっきり連れてくんやと思ってましたけど」

最初市丸は藍染が彼を連れて行く為に雛森と分断したのだと思っていたのだが、この状況を考えるとどうやら違ったらしい。
単純に見れば日番谷にとって人生最悪の出来事を演出しただけのようだった。
最も市丸自身、そうした趣味の悪い演出も嫌いではないので十分楽しんだのだが。

藍染の考えることは市丸には理解できないことが多かった。
興味を引かれて意図を聞いてものらりくらりとかわされることがほとんどなので、今回も応えなど期待してはいなかったのだが。

「……あんな小娘と僕を天秤にかけるなんて、我慢ならないと思わないかい?」

珍しく返ってきた答えに市丸は首を傾げた。

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