NOVEL 2

紫の君 /藍日
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青碧の瞳が憎悪で煌く。
そうして『隊長』であることを放棄した少年に、藍染は目を細めた。



―――――なんという愉悦だろう。

それは、かつて何も識らなかった少年の身体に初めて己の痕跡を残した際に感じた悦びに似ていながら、だがそれとは全く比較にならないほどの充足を藍染に与え、勝利に酩酊したような眩暈すら覚えさせた。
いや、あるいは今だかつて誰をも寄せ付けなかった懸崖に咲く美しい花を乱暴に毟り折ったような昏い達成感だろうか。



自分が彼を、―――――彼の心を穢したのだ。


藍染の口角が自然とあがる。

己がこうあれと決めた色に、染め上げたのだ。
藍染は深い悦楽に浸る。


微笑み合い睦みあう、そんな優しい想いなど、藍染は求めてはいなかった。
唯一無二で絶対の感情。
頭の先からつま先まで、彼の心を覆い尽くすような想い。
そういうものがずっと欲しかったのだ。


天に立つ男が全てを望むのは当然のことだと藍染は思う。
日番谷に全てを捨てて己を差し出させるためだけに、何よりも大切にしていた幼馴染を苦しめたという事実を彼が知る必要はなかった。
知れば今、彼の身を焦がしている藍染への憎悪はたちまち彼自身へと向いてしまうだろうから。

憎悪に燃える少年を見つめながら、藍染は待つ。






私の与えた『憎しみ』という翼で、脇目も振らずに飛び込んでおいで。
そうして私の色に染まった君を、この手で終わらせてあげよう。

私の望み通り成長した君へのご褒美だ。



いずれ全てが死に絶えるのだ。

私の為に死んでおくれ。





END
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